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芥川賞受賞作品と聞くと、前衛的な内容、かつ取っつきにくい著者というイメージが強く、余り触れずに来ました。
そんなわけで『火花』も未読で、最近まで『花火』だとタイトルを誤って覚えていたほどです。

今回、課題図書で読んだところ、漢字が多めで、行儀のいい、かしこまった文章で、又吉直樹という人の生真面目さがよく伝わりました。
漫才論、井の頭公園や高円寺の風景の多弁な描写も魅力的でしたが、それに加え神谷の変態的で破壊的な行動も、内容はしようもないのだけれども選び抜かれた言葉で表現されていて、さすが言葉を武器としてきたお笑い芸人だと、又吉直樹の膂力を感じました。

また、印象的だったのは本書の装丁です。
西川美穂という方の「イマスカ」という作品で「中に人がいるのかいないのかがわからない曖昧部分を表現」しているとのこと。
難しいことはよくわかりませんが、又吉直樹が気に入って表紙に取り上げたということで、ふだんからそういうものに触れている又吉直樹は本当にセンスがいいなと思いました。

今回の課題図書と並行して、芥川賞同時受賞の羽田圭介『スクラップ・アンド・ビルド』も読んでみましたが、老人介護をめぐる祖父と孫の攻防を描いた今日的な作品で、こちらも芥川賞にしては随分わかりやすかったです。

お笑い芸人も介護も身近でわかりやすい題材ですし、人が手に取りやすい内容なのかなと。
活字離れが進む昨今、こういう作品で読者を獲得するというのもいいかとは思うのですが、出版業界のことを考えて芥川賞が日和っているような気もします。
そういうのは本屋大賞や直木賞に任せて、芥川賞は芥川賞らしく独自の道を進んでほしいと願うきょうこのごろです。

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by yuki-kizaki | 2017-10-07 18:46

読書感想文です。


by スプレンダー