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今回の課題図書は、奥田英郎「イン・ザ・プール」。

本作は出版された当時に読んだのですが、下ネタが多かったなという記憶のみで、ストーリーは全く忘れていました。
映画も見た記憶があるのですがうろ覚え。

おもしろい作品であれば当然覚えているし、つまらなかったらそれはそれで覚えているはずなので、
恐らくどちらでもない普通の作品だったのだろうと思い、今回、読み直しました。

主人公は、精神科医である伊良部一郎。
彼のもとに、水泳依存症、陰茎硬直症、携帯依存、強迫神経症、被害妄想といったさまざまな悩みを抱えた患者がやってくる。
変人、幼稚、わがままと三拍子そろったトンデモ医である伊良部は、診察室での治療だけではなく、プライベートでも患者と一緒に行動する。
伊良部の奇矯な行動を目にした患者は驚き、あきれながらも快癒していく。

精神科医と患者を扱った作品ということで、ともすればヘビーになりかねない設定ですが、
ユーモアを前面に出し、幸福な結末に満ちた作品になっているところは好みでした。

医療がテーマなので、自分の知らない専門用語が出てくるかと思ったのですが、特に出てこず、勉強にはなりませんでした。
著者は、実際に自分の通院経験をもとに作品を書いたそうなので、もっと診察や病状など細かい描写ができそうなものでしたが、あえて書かなかったのはなぜか。
余りにリアルにすると、読んでいるほうがつらいと思って配慮したのでしょうか。


伊良部一郎のモデルとなっている伊良部秀輝が、本作が出版された数年後に
悲しい最期を遂げたのを知っている今では、伊良部医師のどんな奇天烈な行動も、
何か無理をしているイメージがあって、若干せつなくなりました。

あと、下ネタが多いので、拒絶してしまう人も多いのかなという気もしました。
本作を読んで奥田英朗を受けつけられなくて、ほかの作品を読まない人も出てくると思うと少し残念です。

奥田英朗の小説はだめでも、エッセイなら下ネタもないので受け入れやすいかと思います。
各地のボールパークを訪ね、公式戦や二軍戦、OB戦を観戦する野球賛歌「野球の国」や、
五島列島、礼文島、釜山等の港町に船で訪れる旅行記「港町食堂」などは本当に名作です。
スポーツや旅行好きの方はぜひ一読をお薦めします。

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by yuki-kizaki | 2017-09-02 13:51

読書感想文です。


by スプレンダー