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今回の課題図書は、ローデンバック作「死都ブリュージュ」(窪田般彌訳)。

「死都」というと、廃墟のようなイメージを思い浮べたのですが、物語の舞台は、そういう壊滅した町ではなく、ベルギーのブリュージュという衰退した町。

かつて商都として栄え、やがて衰退し、19世紀末には「死都」となったブリュージュ。
妻に先立たれたユーグは、死別の苦しみに耐えかねてブリュージュへやってくる。
誰も家に迎えることはなく、静かなやもめ暮らしが続いていたが、ある夜、亡き妻とそっくりな踊り子ジャーヌに出会う。
倒錯的な錯覚に歯どめをかけられずに彼女を囲むユーグ。しかし、行きずりの仲がうまくいくはずもなく、最後には悲劇が訪れる。

上記のようなストーリーで、前回の課題図書「火星の人」とは違い、皆が救われない話でしたが、結構好みな作品でした。
作者のローデンバックは詩人だけあって、ブリュージュの風景描写が見事で、訳者の力も大きいのでしょうけれども、読んでいて心地よかったです。
岩波文庫版には、原書にあった町の写真が何枚も入っているのですが、これによって一層、繁栄を終えた都市の感じも伝わってきました。

個人的には、登場人物のその後が気になり、特に、老後の生活のために真面目に仕事をしていた家政婦まで巻き込まれたのには、少し同情しました。その後、幸せになっていてくれればと願います。
また、ジャーヌを殺してしまったユーグが、その後どうしたのかも気になりました。
私の予想では、病んでいる彼のことですから、犯罪を隠そうとするのではないかと思っています。

夫が、身持ちのよくない放縦な妻を殺してしまい、それを隠す。そこに、たまたま旅行に来ていた刑事が怪しんで、捜査を開始する。
刑事コロンボシリーズでよく見られるパターンです。多分、こんな感じの続編になるかと思います。

そういえば、本作はオペラの題材にもなったらしいですが、本作のどこに歌の要素を入れられるのか気になります。
オペラも見てみたいですが、多分4、5時間とかやりそうなので若干つらいかもしれません。
個人的にはポツドールの三浦大輔あたりが舞台化すれば、より死臭が漂う報われない話になり、面白くなりそうな予感がします。


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by yuki-kizaki | 2017-06-03 17:09

読書感想文です。


by スプレンダー